猪鹿工房 山恵

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獣害から山の恵みへ。私たちがジビエをやっている理由

「ジビエ専門の肉屋をやっている」

と言うと、意外そうな顔をされることがあります。

「肉屋なのに、なぜ獣害の話をするんですか?」

と。

今日は、この問いにあらためて向き合ってみようと思います。

豊田市では、昨年度だけでイノシシ・シカ合わせて約5,000頭が有害鳥獣として捕獲されています。動物看護師をしていた頃の私は、正直この数字の重みをよく分かっていませんでした。田畑が荒らされる、若木の皮が剥がれる、下草がなくなる——

一つひとつは小さな被害に見えても、それが山ひとつ分積み重なると、そこで農業を続けたいという気持ちそのものを削っていくのだと、豊田に来てから知りました。

そして、もっと知らなかったのがこちらです。

約5,000頭が捕獲される中、私たちが精肉として受け入れているのは約600頭。

利活用率にするとおよそ12%で、残りの約9割は食肉として活かされることなく、埋設や焼却で処分されています。

初めてこの数字を知ったとき、率直に「もったいない」と思いました。

有害鳥獣として駆除された命に、それでも出口があってもいいはずだと。

私たちがジビエ専門の肉屋として、解体・処理・精肉という工程に本気で向き合っている一番の理由は、ここにあります。

もう一つ、豊田に暮らして実感したのが、耕作放棄地と獣害の関係です。

人の手が入らなくなった土地は動物の格好の隠れ家になり、個体数が増える。増えた動物がまた農地を荒らし、耕作を諦める人が増える。

この悪循環は、外から誰かが歯止めをかけない限り、なかなか止まりません。捕獲した命の受け皿として精肉業を営むことは、猟師さんたちの活動を支えることでもあり、結果として里山に人の手が入り続けることにもつながっていると感じています。

うちでは精肉だけでなく、皮や骨、角も無駄にしない仕組みづくりを進めています。隣の三州しし森社中さんは、解体後の皮や角を鹿角アクセサリーや革製品に生まれ変わらせてくれていて、一つの命をできるだけ循環させられないかと模索しています。

私たちのミッションは「里山の価値を最大化する」こと。獣害という負の側面だけを見るのではなく、そこにある命や土地、人のつながりを、ジビエという食の形に変えて価値あるものにしていきたい。山の恵みと人間の営みがバランスよく持続する世界を、この足助の地でつくっていきたいと思っています。

この理念に共感してくださる方、一緒に働いてみたい方、あるいは捕獲した命の行き先を探している猟師さんがいらっしゃれば、ぜひ会社紹介ページも覗いてみてくださいね!