
前回「夏の鹿は、雄が面白い。」で少し触れた、夏の雄鹿の脂の話。今日はもう少し深掘りしてみたいと思います。
シカは秋(9〜11月頃)に発情期を迎えます。雄鹿はこの繁殖期に向けて、夏のうちから体をつくっていきます。
他のオスと角を突き合わせて戦い、メスを追いかけ回す(笑)ためのスタミナを蓄える時期。
人間で言えば、大一番を前にした「仕込みの時期」のようなものです。
だから夏の雄鹿は、皮下だけでなく筋間にもしっかり脂がのっています。
これが「ジビエ=秋冬が旬」というイメージを裏切る、夏鹿ならではの面白さです。
今まさに仕上がりつつある雄たちが獲れる時期なんです!
味の違い、どう出る?
同じ「シカ肉」でも、夏の雄と、例えば冬の若い個体とでは、肉の質も味わいもまったく別物になります。
つまり
「夏だから旨い」
のではなく、
「夏にしか出せない味」
がある、という感じです。
では猪だとどうなる?
面白いのは、同じ「牡丹」「紅葉」と並び称されるイノシシとシカでも、発情期がまったく違うということ。
イノシシの発情期は冬(12〜2月頃)。
シカとはちょうど半年ずれています。
だから「牡丹鍋は冬」というイメージ通り、イノシシの雄が繁殖に向けて脂を蓄えるのは秋から冬にかけて。ちょうど寒さに備えて脂肪を蓄積する時期とも重なるため、脂ののりが一段と際立ちます。
一方でシカは、暑さの中で角と体格を仕上げていく。
秋の発情期に向けて、夏から脂を蓄える。同じ「発情期前に脂が乗る」という仕組みでも、季節がまったく逆になるわけです。
そう考えると、「イノシシは冬、シカ(の雄)は夏」というのは偶然ではなく、それぞれの繁殖戦略の違いがそのまま旬の違いになっている、と言えます。
一つの解体処理施設で両方を扱っているからこそ、この対比がよりはっきり見えてきます。
現場で見極める、という仕事
看護師時代に培った「個体の状態を見る目」は、ここでも役立っています。
搬入された一頭一頭、脂ののり方・毛艶・体格を見れば、その個体がどんな季節を過ごしてきたかがある程度わかります。
同じ月・同じ山から来た個体でも、状態は本当にバラバラ。だからこそ、一頭ごとに向き合う処理が欠かせません。
季節が変わるごとに、山からやってくる命の表情も変わる。
そのひとつひとつに向き合うことが、私たちの仕事の面白さだと感じています。
看護師時代に学んだことの一つに「BCS」というものがあります。
ボディーコンディションスコア。
痩せすぎなのか肥満なのかを測る指標なんですがまさかここで役に立つとは!
これを思い出しながら個体の良し悪しの判断材料にしています。
見るたびに自分自身のスコアにも当てはめて絶望しています・・・(笑)
自分の過去の経験や知識をフル活用して毎日励んでいます!